地獄ハイキング 亀川~八幡竈門神社コース
~鬼滅の刃の聖地を訪ねて!~
ガイドレポート(後編)
次に訪れたのは市営温泉の亀陽泉です。平成28年7月に新築開場され、市営温泉となりました。かつては千人風呂と呼ばれるほど大きな湯舟だったようですが、建て替えられる度に浴槽が小さくなるのは、なしか?

亀陽泉が開かれた面白い由来があります。「白亀塚の南一丁余を距ル或部分ノ土地、毎年栽培スル作物ノ早熟スルヲ奇トシ。 明治二十七年ノ春里人ト謀リ試掘セシニ、果セル哉、霊泉湧出ノ箇所二口掘ス」。この辺りはかつて野菜の生育が早まるほどに、地温が高かったらしいのです。
ここから徒歩2分のところに亀の甲公園があり、白亀塚が築かれています。白亀塚の案内板より、「今から1150年以上前の承和15年(847)関の江海岸近くにある『寒(冷)川で白亀が捕獲され、これを第五四代仁明天皇(834年~850年)に献上した。この白亀は、吉祥の亀であるので、嘉祥と改元せよとの勅令があった。』との記述が国史である続日本後記にある。この一件から、亀の甲が転化して亀川になったといわれている。なお冷川は、昔と同じように、清流が滔々と流れているが白亀が捕獲されたというニュースを最近みかけない。現在は白亀塚としての亀の甲公園に石で造った甲羅が祀られ、往時を偲ばせている。」


亀川の地名の由来が書かれていますが、先の八幡竈門神社は亀川・平田・内竈・古市・野田の5村の総鎮守で、春の大祭には竈門神社の神輿が巡行し、ここが御旅所となっています。
かつてはこの5村の持ち回りの武者行列が、3基の神輿を付き従い、大ホコ・羽熊・鳥毛・島田・かさ振り・大弓・左大臣・右大臣などが色とりどりの衣装で長い行列を作っていたそうで、この武者行列は昭和30年代まで続いていたということです。
JRの線路を渡って市営浜田温泉に着きました。浜田温泉の裏にかつての防波堤が残っており、すぐ裏が海岸線であったことが判ります。

浜田温泉の歴史は古く、開湯は1889(明治22)年のことです。今、浜田温泉資料館となっている建物が建てられたのは1935(昭和10)年のことで、竹瓦温泉より古い建物です。現在の建物は2002(平成14)年に建てられ、翌年には旧浜田温泉は取り壊されました。ただし、解体にあたって、設計図を作成するとともに、部材の一部保存が行われたため、2005(平成17)年に資料館として再建されたのでした。2006(平成18)年には 国の登録有形文化財に登録されました。

旧浜田温泉の洒落た意匠をご紹介しましょう。入母屋の立派な玄関を入って、浴室のある半地下に下ると、入り口側に「蒸し湯」の跡がありますが、ここの天井に明り取りの仕掛けがあるのです。正面玄関の地面に水晶のキューブが埋め込んであり、これを通して太陽光が届くという、洒落たからくりが施されています。

今回、コース設定の都合で行けませんでしたが、別府で「鬼」といえば、ここを外す訳にはいきません。別府市上人西町の上人小学校の裏手に、国指定史跡「鬼の岩屋古墳」があります。


鬼の岩屋古墳は古墳時代後期(6世紀後半)作られた円墳で、玄室内部に円文・蕨文などの装飾が施された装飾古墳です。玄室は安山岩の巨石を積み上げて作られており、鬼でなければ作れない巨石であることから、この名になったという事です。
かつては入場料もとる観光名所で、「熊襲穴居の跡」と考えられていました。
そしてもう一か所、八幡竈門神社をお祀りした竈門一族の墓所といわれる場所です。四の湯町から北部中学前を通り、旧羽室台高校前を過ぎた先の民家の奥に、羽室御霊社があります。

この地区には大神竈門一族の居城があり、後に鎮西八郎為朝に攻め滅ぼされ、為朝が居城を築いたと言い伝えられています。その後再び竈門一族の所領となり、室町時代末期まで続いたという事です。

現地の案内板によれば、「杜の創建は、古くは鎌倉時代と言われている。23基の五輪塔が古搭群を形成している。また、社には、滝沢馬琴の椿説弓張月で有名な源為朝が弓を掛けたといわれる老松が昇天の龍さながら、枝をうねらせていた。今はその松(弓掛けの松)も枯れ昔を偲ぶことすらできない。」とありました。
こちらは石塔群の案内板です。「この羽室御霊社社殿裏の古塔群は大きく3群に分かれ、国東塔、五輪塔、角塔婆、板碑など各種の古塔があります。この古塔群全体が県指定史跡に、またこのうち最も大きな五輪塔3基が県指定有形文化財にそれぞれ指定されています。造立年代は塔の形式から鎌倉時代後期から室町時代前期で、当時この地を治めていた竈門氏の墓地と考えられています。(後略)」
亀川駅東口まで戻り、 今回の「地獄ハイキング」はゴールに達しました。今期は前半にコロナ禍で2回が中止となり、全6回の開催となりました。来期は4月ごろに第1回を開催する予定ですが、別府温泉地球博物館のHPで告知しますので、お楽しみにしてください。