海心堂の温泉逍遥

日本一のおんせん県おおいた(別府八湯温泉道、奥豊後温泉文化伝)を中心に、九州の温泉(九州温泉道)の入湯記録

鉄輪温泉 上人湯 ♨国の重文「遊行上人絵伝巻第七」が公開されていました♨

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12-29/1062  別府八湯温泉道 No.44

鉄輪温泉 上人湯

 

♨国の重文「遊行上人絵伝巻第七」が公開されていました♨

 

平成30年9月23日訪問

 

 湯あみ祭りの期間中、永福寺では国の重要文化財の「遊行上人絵伝巻第七」が展示されます。多くの人物が描写されていますが、一人一人の表情の違いなど、その完成度はさすがです。貴重な寺宝が無造作に公開されていて、盗難等の恐れはないのか気に掛かります。



 

 文化財オンラインによれば、「遊行上人絵伝は、全一〇巻の前半四巻に時宗の開祖一遍上人の伝記を、後半六巻に第二祖他阿【たあ】上人真教の伝記を描くものをいい、(中略)巻第十の詞書中に嘉元元年(一三〇三)の記述があること、京都・金蓮寺本に徳治二年(一三〇七)の奥書(の写し)があることなどから、原本の成立は十四世紀のごく初期であったろうことがうかがわれる。

 この永福寺本は現在は巻第七のみの残巻である。冒頭第一段の詞書約三行分を欠くほかは、第七巻に収められるべき全六段の詞、絵を備える。巻子装で、現状に錯簡はない。本紙の紙継ぎ幅は一定せず、絵と詞は紙を替えている。」とあります。


 

 

 一遍ゆかりの上人湯で湯あみしました。入口の厨子に上人像が祀られていますが、蓮の花の蕾を胸に抱いたお姿で、入浴者を優しく見つめておられました。浴室内は無人で、湯がかなり熱くなっていました。水を足して入りましたが、メタケイ酸734.0mgは国内有数の含有量でしょう。はっきりした塩味と控えめな鉄味がありました。



 

【分析書データ】ナトリウム-塩化物泉、83.4℃、PH4.2、成分総量4664mg、無色・澄明・中塩味・弱金気味・殆ど無臭 H22.2.2 市有鉄輪泉源 メタケイ酸734.0

 

入浴料 100円


鉄輪温泉 旅館みゆき屋 ♨鉄輪で「湯あみ祭り」が行われていました♨

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12-28/1061  別府八湯温泉道 No.103

鉄輪温泉 旅館みゆき屋  

 

♨鉄輪で「湯あみ祭り」が行われていました♨

 

平成30年9月23日訪問

 

 9月21~23日の間、鉄輪一帯では地獄を鎮め鉄輪温泉を拓いた一遍上人の徳を讃え、温泉に感謝を奉げる「湯あみ祭り」が行われています。この日の10:30に温泉山永福寺での法要の後、稚児行列に先導された一遍上人の木像が一帯を巡り、渋の湯と蒸し湯では上人像を温泉で清める「湯あみ法要」が行われます。


 

 奈良時代の豊後国風土記や伊予国風土記逸文に記載されるほど、鉄輪の温泉は古くから知られていたのですが、噴気の立ちのぼる地獄地帯や沸騰泉であったため、入浴用として利用される事はありませんでした。この高温の温泉を蒸し湯として使う事を教えたのが一遍上人で、時の領主の大友氏三代頼泰は元寇で傷ついた武士団を蒸し湯で癒したと伝えられています。

 

 つまり、沸騰泉を蒸し湯として利用する一遍の知恵を持って初めて、鉄輪温泉が浴用として使われることになりましたが、それはあくまで「風呂」であり、「湯」ではありません。蒸し風呂を教えたのが一遍上人であり、永福寺のある所は「風呂本」という地名なのです。


 

 永福寺にお参りした後、こちらでお湯を頂きました。内湯、露天風呂2つともに空いていましたが、露天風呂に入れていただきました。湯が溜まったばかりで少し熱く、かなり大目に加水しましたが、鉄輪らしい香りとダシ塩味は健在でした。


 ここの内湯には蒸し湯が付いていて、以前は石菖が敷き詰められていたそうです。石菖は水辺に自生する薬草で、その数が減っているので、今では市営の蒸し湯でしかお目にかかれなくなっています。

 

【分析書データ】ナトリウム-塩化物泉、80.2℃、PH3.4、成分総量3549mg

 

入浴料 250円(七段半額券)

鉄輪温泉 ひょうたん温泉 - ミシュラン三ツ星は話の種

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1060 別府八湯温泉道 No.41

鉄輪温泉 ひょうたん温泉

   ♨ミシュラン三ツ星は話の種♨

 

平成30年9月16日訪問

 

 この日の最後は鉄輪の人気施設のこちらです。次々と入浴客が訪れるので、駐車場には案内係が配置されています。

 

 受付を済ませ脱衣所に向かうと、何やら熱気が籠って暑いので、エアコンが止まっているのかと思ったら、人が多くて空調の能力不足のためでした。あまりの人気が仇になってますね。

 

 浴室内もやはりかなりの込み具合ですが、なぜか名物の瀧湯だけは無人で、ぬるめの湯を首・肩・腰に当ててコリをほぐしました。



 

 露天風呂も空いていましたが、日差しが強く長くはいられませんが、湯雨竹で冷まされた湯は塩味とダシ味の鉄輪らしいものでした。



 

 こちらはミシュランの三ツ星を4回連続で獲得しているのですが、施設のHPでは「ひょうたん温泉は日本一の湯量を誇る別府の鉄輪を代表する温泉であり、観光ミシュランガイドでは「瀧湯や砂湯などがおすすめで、別府で最も美しい温泉」などと記されています。(中略)ミシュランという話は、話半分、話の種として来ていただけると満足していただけると思います。」と謙虚なところが好感が持てますね。

 

分析書データ:ナトリウム-塩化物泉、97.6℃、PH3.11、成分総量3724mg

無色・澄明・微弱塩味・無臭 2016.4.8 メタケイ酸477.8 鉄Ⅰ1.0 鉄Ⅱ0.4

 

入浴料 0円(無料招待券)

鉄輪温泉 小倉薬師温泉丘の湯 -『特効原爆症」』の正体は湯をさます山水

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12-27/1059  別府八湯温泉道 No.84

鉄輪温泉 小倉薬師温泉丘の湯

    ♨『特効原爆症」』の正体は湯をさます山水♨

 

平成30年9月16日訪問

 

 次に訪ねたのは小倉地区のこちらです。

 

 ちょうど先客が上がられるところで、貸し切りできれいなここの湯を頂きました。


 

 原爆センター跡に出来たベネフィットフォーユーさんがこちらに湯を提供してくれているようで、ほのかに硫黄香がありました。表の看板に「特効原爆症」と大書されていますが、効能があるのは87℃の源泉を冷ましている山水なのだそうです。





 

 九州大学温泉治療学研究所の八田秋氏の論文にその効能が記載されています。「昭和329,上村博士が25名の被爆者とともに別府丘の湯を訪れ,2週間の湯治効果が予想以上に良好であったことから.昭和345月まで.前後11,168名の被爆者の湯治が行なわれた。その中で湯治前後の検査を行ないえた132名の19項目の検査所見では,従来指摘されていた血液変化が約2週間の湯治により著しい改善と正常化を示し,ことに貧血と出血性素因のそれが著明であった。」

 

 いつもはかなり湯が熱いのですが、先客の加水でこの季節には適温のぬるめの湯が味わえました。

 

分析書データ:なし

 

入浴料 100円

明礬温泉 明礬湯の里 - 源泉は下からポンプアップされている

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12-26/1058  別府八湯温泉道 No.59

明礬温泉 明礬湯の里 
 
     ♨源泉は下からポンプアップされている♨

 

平成30年9月16日訪問

 

旧富士観ホテルの前を通ると、新しい建物の全容が想像できるほどに工事が進捗していました。





 

9:00のオープンだと思っていたら、10:00からでしばらく待つ事になりましたが、その間に管理人さんと話が出来ました。以前から疑問だった源泉がどこにあるのかを尋ねると、露天風呂の下に昔から湯の花小屋を建てていた場所があって、そこで自然湧出しており、ポンプアップしてここの浴槽で使っているとの事でした。

 

ご多分に漏れずここでもカメラやスマホの持ち込みや写真撮影を禁じています。オープンダッシュで他の方が入浴する前に撮影しましたが、これもルール違反ですよね。入浴者がいるのに無神経にカメラを向ける輩がいるので、施設としてはトラブルを避けるために禁止せざるを得なくなるのでしょうね。



 

浴槽の屋根越しに青々とした扇山が広がり、その向こうには鶴見岳が聳えていました。



 

大分合同新聞8/28朝刊にこんな記事がありました。「2016年4月に発生した熊本・大分地震の影響で、山腹の地表がむき出しになった別府市の鶴見岳一帯を緑化する国と県の工事が進んでいる。ヘリコプターで上空から草木の種をまく「航空実播(じっぱん)(緑化)工」という手法で、人が入れない急峻(きゅうしゅん)な場所で効果を発揮する。崩壊地の拡大を防ぎ、損なわれた景観を回復させる狙いがある。(中略)熊本・大分地震に起因する山腹崩壊で、航空実播工が必要な場所は、県内では鶴見岳周辺に集中する。崩壊地は市街地や東九州自動車道から目立ち、市民から不安の声が多く寄せられたという。住宅密集地を通る春木川、境川の上流域に当たり、土砂流出を防ぐ必要性もある。」

 

分析書データ:酸性・含硫黄-単純温泉、64.4℃、PH2.3、
成分総量864mg、無色・弱白濁・弱収斂味・強硫化水素臭 H27.3.24 
水素イオン 5.0 硫酸イオン470 メタケイ酸160.8

 

入浴料 0円(七段無料券)

日本温泉科学会第71回大会 エクスカーション・レポート

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日本温泉科学会第71回大会 

エクスカーション・レポート

 2018年9月8日、日本温泉科学会第71回大会のエスクカーション(共同で行う野外調査)にサポート・スタッフとして参加しました。


 参加者は午前9時に別府市公会堂に集合、由佐大会運営委員長他16名の参加者とスタッフ3名の総勢19名は、折からの雨にやや肌寒さを感じながら出発しました




 最初に向かったのは別府市堀田の恵下地獄です。県道から100mほど登った所に、大分県が板地川源流の谷筋の砂防工事を行っている場所 があり、その奥に地熱地帯が広がっていました。辺りは地面から噴気が立ち上り、熱泥の湯だまりや、高温の蒸気が立ち上る噴気孔などが見られます。渓流の川底からも熱水が湧き出しているようで、白濁の湯だまりが観察できました。


 


 もうもうと火山性ガスが噴出していますが、硫化水素臭はほとんどなく、これは後に向かう伽藍岳の火口と同様です。NHKの「ブラタモリ別府温泉」のなかで由佐先生が解説しておられましたが、伽藍岳の地下深くに広大な熱水だまりがあり、マグマ由来の火山ガスはこの熱水だまりを通った後で地表に噴出するため、塩化水素、亜硫酸ガスなどの有毒ガスは熱水に溶け込んで無毒化されているためです。





 平成27年7月発刊の「大分県温泉調査研究会報告第66号」に京都大学の大沢信二教授他2名の研究論文別府・恵下地獄の地球科学的調査が掲載されています。その論文によれば、「(1)別府南部地域で、恐らく初めて、酸性硫酸塩型(H-SO₄ タイプ)水質の温泉の存在を確認した。(2)温泉水は、深部熱水(約300)の沸騰で発生した硫化水素(H₂S)混じりの水蒸気が、天水起源地下水に流入して生じる典型的な蒸気加熱型温泉(蒸気性温泉)である。(3)温泉水を生成させている深部熱水由来の水蒸気の一部が噴気として流出しており、それに含まれるヘリウム(He)や二酸化炭素(CO₂)の大もとの起源は、別府温泉の他の地獄や噴気地からのものと同じく、マグマである。」と記述されています。





 ここ恵下地獄一帯の土地の所有者は、久住の名湯、赤川温泉赤川荘などのオーナーで久住観光開発㈱の池田高明氏だそうです。地熱発電所の建設を計画されているとの事ですが、開発許可が下りず足踏み状態の様です。ブログ主の主観ですが、発電所よりも温泉施設として開発されることを切望します。

 次に向かったのは十文字原展望台です。ここからは正面の別府湾、北東方面に国東半島、南東方面に高崎山と大分市市街地が一望できます。別府湾は別府湾-日出生断層帯の一部で、100万年前から年に1cmずつ裂け目が広がっており、現在の別府湾ができています。また、主として断層の北側が相対的に隆起する正断層で、国内には逆断層が多く、比較的珍しいものだそうです。





 さて、次は伽藍岳の火口見学です。「火口」と言いましたが、実は別府白土の採石地の跡で、本物の火口ではありません。





 まずは伽藍岳の説明を「別府温泉辞典」より引用します。「別府温泉の熱源域と考えられている伽藍岳は、鶴見火山群の北端に位置し、「鶴見岳・伽藍岳」として活火山に認定されています。標高1045m、またの名を硫黄山と言います。主な噴出溶岩は粘性の高い角閃石安山岩で、山頂部は2つの溶岩ドーム(溶岩円頂丘)に分かれ、南西斜面は径300mほどの円弧状の崩壊地形になっています。崩壊地の内側には、過熱蒸気(120)を含む活発な噴気活動が見られます。また、強い酸性(pH 1~2)の温泉水が湧き出しており、その一部は塚原温泉の源泉に使われて、多くの入浴客に親しまれています。」





 次に「別府白土」について、「安山岩などの火山岩が硫酸酸性の熱水の作用を受けて、金属成分(K, Na, Ca, Mg, Fe, Al 等)が溶け出し、成分のほとんどがシリカ(SiO₂)となって白色化した岩石を「珪酸白土」と言います。日本の火山地域のあちこちにありますが、代表的なものが別府のもので、かつて「別府白土」と呼ばれて採掘されていました。用途は、セメントの混合物、水ガラス(接着剤)、ゴムの硬化剤などです。」





 見学の途中で由佐先生から教えていただいたのですが、塚原温泉の酸性度の高さは、自然湧出の単なる温泉水では説明がつかず、地中の特殊な自然現象として明礬の湯の花に近いものが生成され、それが温泉水に溶けだしているのではないかという事です。なるほど、湯の花の主成分は鉄やアルミニウムの硫酸塩で、ここの泉質とも一致します。これが解明できれば、実に興味深いと感じました。


 ここで昼食休憩を取りましたが、参加者の中には短い時間に内湯と露天風呂をはしごする強者もおられました。また、この辺りは標高が850mほどですから、気温も17℃まで下がり、秋の足音がひしひしと聞こえてくるようでした。



 本日最後の訪問地は、九重町野上の九州電力滝上地熱発電所です。こちらは平成8年11月に営業運転を開始した、九州で5番目、全国では11番目の地熱発電所です。





 蒸気の取り出しを出光大分地熱㈱が担当し、発電を九州電力㈱担当し、共同で運営しています。また、通常の運転状況の監視は、20km離れた大岳発電所から遠隔監視しており、ここは無人なのだそうです。


 生産井が7本(稼働中は6本)あり、すべての蒸気を生産1号基地に集め発電しています。蒸気とともに熱水も噴出しますが、気水分離器(セパレーター)で分けられ、5本(総本数は15本)の還元井から105℃で地中に戻されます。この湯温なら還元井のスケールの付着はほとんどなく、一年に一度の除去で済みます。





 取り出す井戸の深さは最深2,700mで、蒸気の温度は200~250℃で、1時間に260トンを使用して、27,500kwを発電しています。発電後の蒸気は復水器、冷却器に通して冷やし、再びタービンの冷却に使われます。


 また、平均130℃熱水のうち1,100トン/時は、バイナリー発電に利用され、5,050kwを発電しています。


 同じ九州電力の八丁原発電所では、取り出した熱水の一部を筋湯温泉や湯坪温泉に供給していますが、こちらはすべて還元井で地中に戻し、復水器で液体になった蒸気の一部を河川に流しています。





 採取した熱水の泉質をお尋ねしましたが、温泉として利用しないので、成分分析を行っておらず、ナトリウム-塩化物泉であることしか解りませんでした。


 環境省の発表によれば、全国の稼働中の地熱発電所は43カ所で、そのうち大分県は17カ所を数えます。別府市に11カ所、由布市1カ所、九重町5カ所です。


 一方、市町村別の温泉湧出量は、別府市が87,363L/分で日本一、2位は九重町で83,742L/分、3位は由布市で50,402L/分と続きますが、九重町が別府市を抜くのは時間の問題でしょう。ただ、九重町は地熱発電のための掘削が多く、熱水は還元井から地中に戻している場合が多く、実質の湧出量はずっと少ないものと思われます。



 今回のイクスカーションはこれで終わりです。大分空港経由で別府駅まで戻り、参加者の方々は各地へお帰りになりました。


 素晴らしい機会を頂いて、このツァーに参加させていただいた事に心より感謝いたします。

日本温泉科学会第71回大会 公開講演を拝聴しました

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日本温泉科学会第71回大会 公開講演を拝聴しました                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

 2018年9月5日、日本温泉科学会第71回大会が別府市公会堂で始まりました。

別府での開催は2003年以来、15年ぶりとなります。

大会期間中の9/6~9/7は、全国から参集した学会員の一般講演や、特別講演が行われ、最終日には県内の温泉関連のフィールドを巡るエスクカーション(共同で行う野外調査)があります。



 私は学会員ではありませんので、本日の公開講演と、最終日にエスクカーションのスタッフとして参加する予定です。




 大会運営委員長の由佐悠紀京都大学名誉教授の開会挨拶に続き、京都大学名誉教授で別府温泉地球博物館理事の竹村恵二先生が登壇され、「別府温泉地球博物館・フィールド博物館と大分のジオパーク」と題して講演されました。




 演題の「フィールド博物館」の活動の中心が、年に8回行われる”地獄ハイキング”で、私も温泉マイスターとして幾度も参加しており、身近な活動に関する発表でした。

 まず、別府温泉を地球科学的な見方で楽しみ、温泉資源に対する考えを深める場として生かすために、”地獄ハイキング”があると紹介されました

 別府温泉地球博物館の3つの活動の柱のうち、フィールド博物館は「実際に現地で温泉・地熱現象を体験し、その生成メカニズムまでを考えるきっかけを醸成し、また自然保護への視点を広げるための重要な役割を果たしている。」として、地獄ハイキングは既に14コースがあります。 
   

 そして、「フィールド博物館の地獄ハイキングは現在3つのカテゴリーで実施されている。

(1)従来からの一般向けの募集によるもの、(2)別府温泉地球博物館の第3の柱である”人材育成”に関わって整備されてきた温泉マイスター試験に合格した温泉マイスターの方々を対象として実施するもの、(3)さらに、温泉マイスターのうちシニアマイスターを目指したり、現地ガイドに興味がある方々が案内するものである。

マイスターによるガイドでは、ガイドする方が自ら作成したコースを追加する事も含まれ、単なるガイドブック内容の紹介や説明でない、自らの温泉科学学習の成果を含めることも可能になっている。このように、別府温泉の地球科学・温泉科学を学ぶだけでなく、内容を深め、市民・観光客に広げる活動も少しずつ始まっている。」と
紹介されました。

 なお、大分のジオパークに関しては、ジオパーク活動を推進する大分県職員の汚職事件が発覚し捜査中であることからか、ごく簡単に触れられただけでした。


 竹村先生の「別府愛」がヒシヒシと感じられる、素晴らしい講演でした。 


 第2講は温泉評論家で日本温泉地域学会会長の石川理夫先生による、「温泉の日本史と別府」と題する講演でした。石川先生は今年6月に中公新書より「温泉の日本史-記紀の古湯、武将の隠し湯、温泉番付-」を出版されました。


 温泉研究において「温泉の歴史・文化史などの人文科学分野からのアプローチは、自然科学分野に比べるとこれまではるかに限られていた。しかし、地域住民・国民だけでなく、海外からの観光客も日本の温泉地と温泉資源の特色ある魅力に惹かれている今日、温泉地の活性化のためにも温泉地が持つ歴史的文化的蓄積を再評価していくべきだろう」との問題提起から、別府温泉の歴史を取り上げ、
紹介されました


 別府を示す古代の地名は「敵見(あだみ)郷」で、神奈川県の熱海温泉は「直見(あたみ)郷」ですが、どちらも海辺まで高温泉湧出・地熱地帯だったことから「あたみ」と呼ばれていました。


 次に、天平時代の西暦730年代に編纂された
豊後国風土記には、温泉の色や析出物・泉質などの詳しい情報があり、今の血の池地獄に当たる「赤湯の泉」や鉄輪の「久倍理湯井(くべりゆのい)」が紹介されています。
ただし、この時代は入浴用に利用できない湧出状況であったことが描写されている事が印象的です。


 
伊予国風土記逸文に「伊予の国の風土記に曰く、湯の郡。大穴持命、見て悔い恥ぢて、宿奈毘古那命を活かさまく欲して、大分の速水の湯を、下樋より持ち度り来て、宿奈毘古奈命を漬し浴ししかば、蹔が間に活起りましまして、居然しく詠して、真蹔、寝ねつるかもと曰りたまひて、践み健びましし跡処、今も湯の中の石の上にあり。凡て、湯の貴く奇しきことは、神世の時のみにはあらず、今の世に疹痾に染める万生、病を除やし、身を存つ要薬と為せり。」とあります。

しかし、先生は「見て悔い恥ぢて」を「悔い恥しめられ」と解釈、大穴持命と宿奈毘古那命との主客が逆転して解釈されており、温泉の神は宿奈毘古那命であると
断言されました


 それにしても、道後温泉の公式ホームページでは、「
日本書紀にも登場するわが国最古といわれる温泉です。」と言ってはばからず、速見の湯を下樋で道後に引いたとの逸文の記述は、目を背けたくなるものであり、公式ホームページには道後の湯で病気が癒えた事だけが記述されています。


 鎌倉時代になると、一遍上人と鉄輪温泉が記録として残っていますが、これは道後温泉近くの出身の一遍が蒸し湯の効能を熟知しており、鉄輪の地熱地帯に石風呂を作り、蒸し風呂として活用することで、初めて温泉としての利用の道が開かれたということです。

つまり、8世紀初めの豊後国風土記の時代から、一遍による開湯までは鉄輪は温泉としては利用されなかったことを示しています。


 また温泉の利用法については、「現在は湯浴や飲泉法に加えて、打たせ湯、箱蒸し足湯、砂湯、泥湯、蒸し湯が備わって」「日本で最も多彩な温泉利用法を保」ち、「誕生の背景となった歴史、仏教・温泉文化とともにアピールして、海外客を持対象にしたヘルスツーリズムに生かすべき」と提言されました。


 最後に別府の共同浴場文化に触れ、実数として80前後と想定されるとし、市町村別では日本一であり、「別府が大切に残している共同浴場、地域による温泉の共同利用と管理は、今日でいえば
コモンズのガバナンスにつながり、温泉資源の持続的利用に大きな示唆を与えているといえよう。」と結ばれました。


引用はいずれも本講演の要旨書からです

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