海心堂の温泉逍遥

日本一のおんせん県おおいた(別府八湯温泉道、奥豊後温泉文化伝)を中心に、九州の温泉(九州温泉道)の入湯記録

日本温泉科学会第71回大会 エクスカーション・レポート

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日本温泉科学会第71回大会 

エクスカーション・レポート

 2018年9月8日、日本温泉科学会第71回大会のエスクカーション(共同で行う野外調査)にサポート・スタッフとして参加しました。


 参加者は午前9時に別府市公会堂に集合、由佐大会運営委員長他16名の参加者とスタッフ3名の総勢19名は、折からの雨にやや肌寒さを感じながら出発しました




 最初に向かったのは別府市堀田の恵下地獄です。県道から100mほど登った所に、大分県が板地川源流の谷筋の砂防工事を行っている場所 があり、その奥に地熱地帯が広がっていました。辺りは地面から噴気が立ち上り、熱泥の湯だまりや、高温の蒸気が立ち上る噴気孔などが見られます。渓流の川底からも熱水が湧き出しているようで、白濁の湯だまりが観察できました。


 


 もうもうと火山性ガスが噴出していますが、硫化水素臭はほとんどなく、これは後に向かう伽藍岳の火口と同様です。NHKの「ブラタモリ別府温泉」のなかで由佐先生が解説しておられましたが、伽藍岳の地下深くに広大な熱水だまりがあり、マグマ由来の火山ガスはこの熱水だまりを通った後で地表に噴出するため、塩化水素、亜硫酸ガスなどの有毒ガスは熱水に溶け込んで無毒化されているためです。





 平成27年7月発刊の「大分県温泉調査研究会報告第66号」に京都大学の大沢信二教授他2名の研究論文別府・恵下地獄の地球科学的調査が掲載されています。その論文によれば、「(1)別府南部地域で、恐らく初めて、酸性硫酸塩型(H-SO₄ タイプ)水質の温泉の存在を確認した。(2)温泉水は、深部熱水(約300)の沸騰で発生した硫化水素(H₂S)混じりの水蒸気が、天水起源地下水に流入して生じる典型的な蒸気加熱型温泉(蒸気性温泉)である。(3)温泉水を生成させている深部熱水由来の水蒸気の一部が噴気として流出しており、それに含まれるヘリウム(He)や二酸化炭素(CO₂)の大もとの起源は、別府温泉の他の地獄や噴気地からのものと同じく、マグマである。」と記述されています。





 ここ恵下地獄一帯の土地の所有者は、久住の名湯、赤川温泉赤川荘などのオーナーで久住観光開発㈱の池田高明氏だそうです。地熱発電所の建設を計画されているとの事ですが、開発許可が下りず足踏み状態の様です。ブログ主の主観ですが、発電所よりも温泉施設として開発されることを切望します。

 次に向かったのは十文字原展望台です。ここからは正面の別府湾、北東方面に国東半島、南東方面に高崎山と大分市市街地が一望できます。別府湾は別府湾-日出生断層帯の一部で、100万年前から年に1cmずつ裂け目が広がっており、現在の別府湾ができています。また、主として断層の北側が相対的に隆起する正断層で、国内には逆断層が多く、比較的珍しいものだそうです。





 さて、次は伽藍岳の火口見学です。「火口」と言いましたが、実は別府白土の採石地の跡で、本物の火口ではありません。





 まずは伽藍岳の説明を「別府温泉辞典」より引用します。「別府温泉の熱源域と考えられている伽藍岳は、鶴見火山群の北端に位置し、「鶴見岳・伽藍岳」として活火山に認定されています。標高1045m、またの名を硫黄山と言います。主な噴出溶岩は粘性の高い角閃石安山岩で、山頂部は2つの溶岩ドーム(溶岩円頂丘)に分かれ、南西斜面は径300mほどの円弧状の崩壊地形になっています。崩壊地の内側には、過熱蒸気(120)を含む活発な噴気活動が見られます。また、強い酸性(pH 1~2)の温泉水が湧き出しており、その一部は塚原温泉の源泉に使われて、多くの入浴客に親しまれています。」





 次に「別府白土」について、「安山岩などの火山岩が硫酸酸性の熱水の作用を受けて、金属成分(K, Na, Ca, Mg, Fe, Al 等)が溶け出し、成分のほとんどがシリカ(SiO₂)となって白色化した岩石を「珪酸白土」と言います。日本の火山地域のあちこちにありますが、代表的なものが別府のもので、かつて「別府白土」と呼ばれて採掘されていました。用途は、セメントの混合物、水ガラス(接着剤)、ゴムの硬化剤などです。」





 見学の途中で由佐先生から教えていただいたのですが、塚原温泉の酸性度の高さは、自然湧出の単なる温泉水では説明がつかず、地中の特殊な自然現象として明礬の湯の花に近いものが生成され、それが温泉水に溶けだしているのではないかという事です。なるほど、湯の花の主成分は鉄やアルミニウムの硫酸塩で、ここの泉質とも一致します。これが解明できれば、実に興味深いと感じました。


 ここで昼食休憩を取りましたが、参加者の中には短い時間に内湯と露天風呂をはしごする強者もおられました。また、この辺りは標高が850mほどですから、気温も17℃まで下がり、秋の足音がひしひしと聞こえてくるようでした。



 本日最後の訪問地は、九重町野上の九州電力滝上地熱発電所です。こちらは平成8年11月に営業運転を開始した、九州で5番目、全国では11番目の地熱発電所です。





 蒸気の取り出しを出光大分地熱㈱が担当し、発電を九州電力㈱担当し、共同で運営しています。また、通常の運転状況の監視は、20km離れた大岳発電所から遠隔監視しており、ここは無人なのだそうです。


 生産井が7本(稼働中は6本)あり、すべての蒸気を生産1号基地に集め発電しています。蒸気とともに熱水も噴出しますが、気水分離器(セパレーター)で分けられ、5本(総本数は15本)の還元井から105℃で地中に戻されます。この湯温なら還元井のスケールの付着はほとんどなく、一年に一度の除去で済みます。





 取り出す井戸の深さは最深2,700mで、蒸気の温度は200~250℃で、1時間に260トンを使用して、27,500kwを発電しています。発電後の蒸気は復水器、冷却器に通して冷やし、再びタービンの冷却に使われます。


 また、平均130℃熱水のうち1,100トン/時は、バイナリー発電に利用され、5,050kwを発電しています。


 同じ九州電力の八丁原発電所では、取り出した熱水の一部を筋湯温泉や湯坪温泉に供給していますが、こちらはすべて還元井で地中に戻し、復水器で液体になった蒸気の一部を河川に流しています。





 採取した熱水の泉質をお尋ねしましたが、温泉として利用しないので、成分分析を行っておらず、ナトリウム-塩化物泉であることしか解りませんでした。


 環境省の発表によれば、全国の稼働中の地熱発電所は43カ所で、そのうち大分県は17カ所を数えます。別府市に11カ所、由布市1カ所、九重町5カ所です。


 一方、市町村別の温泉湧出量は、別府市が87,363L/分で日本一、2位は九重町で83,742L/分、3位は由布市で50,402L/分と続きますが、九重町が別府市を抜くのは時間の問題でしょう。ただ、九重町は地熱発電のための掘削が多く、熱水は還元井から地中に戻している場合が多く、実質の湧出量はずっと少ないものと思われます。



 今回のイクスカーションはこれで終わりです。大分空港経由で別府駅まで戻り、参加者の方々は各地へお帰りになりました。


 素晴らしい機会を頂いて、このツァーに参加させていただいた事に心より感謝いたします。

海心堂

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